ソルの練習曲 セゴビア選 9番,10番

セゴビアの番号では9番、10番ですが、ソルの作品番号ではOp.31-20とOp.31-19で順序が逆ですね。

■No.9 Andante Allegro Op.31-20
私のフォーカルジストニアにはあまり影響のない曲でした。

セゴビア版の楽譜(東亜音楽社/三木理雄校註)の解説に『消音にあたっては共鳴音も消すようにする』とあります。たしかに弾いていると「この響きは消したい」と思うところがたくさんあって、右手左手のあらゆる指を駆使して消音をしようとするのですが、とてもすべては対処できません。

そもそもこの曲は消音の練習曲なのか。オリジナルに近いと思われる楽譜(現代ギター社版/中野二郎監修)には『・・・これの目的は、和音の押弦を敏速に行うこと・・・』とあります。つまり、ほとんどの拍の裏に入れられている休符は『音を繋ぐことは気にしなくていいから、まずは和音の移動の際の押弦を確実にしなさい』というソル先生のありがたいご配慮なのではないかなあ。

とか言いながら、上声部とベース音で音価の違うところなどもあって、油断できません。


■No.10 Andante Op.31-19
曲を特徴づけている32分音符、以前は [imim i] で弾いていましたが、フォーカルジストニアを患った現在、その指使いでは上手く弾くことができません。imiまではいくのですが一度弾いたmが伸びきらず、次の弾弦に間に合いません。

また、セゴビア版の指定は [aimi m] という不可解な(個人の見解です)ものですが、最初のaのときに一緒に動いたmがそのままなので、やはり上手く弾けません。(↓セゴビア版)

ところがここに天の救いがありまして、『この練習曲の目的は、32分音符において右手親指を人差指と交互させることによって、親指の正確な運用に学習者を慣れさせることにある』(現代ギター社版/中野二郎監修)なんだそうです。[pipi p] で弾いてよし、むしろそれが作曲者の意図である、ということですね。なんとありがたいことでしょう。これならば imimよりはだいぶマシに弾けます。

しかし、実際にやってみると、やはりいくつかの問題がありますね。

まず、音が詰まり気味になる。i指のタッチが早すぎて、pで弾いた音を消してしまいがちです。音価の短い音符なので、ちょっとでもタッチが早いと音が出ている時間よりも消されている時間のほうが長くなってしまいます。

次に消音。32分音符をpipiで弾き、最低音もp指で弾くとなると、この音をどうやって消すか。これは左手を使うしかありませんね。結果、ほとんど左手はセーハ状態となります。弾く時は指を浮かせ、弾き終わったらセーハで消音する、あまりやったことのない操作です。

そしてもっとも難しかったのは7小節目後半から8小節目のところです。セゴビアの指使い([aimi m])はここを弾くために決められたのかなあと思うくらいですが、私は下図のように弾いてみました。p指が大忙しなのは、ソル先生の狙いどおりでしょうか。

2件のコメント

  1. はじめまして、吉村と申します。Youtubeで貴サイトを見つけ、非常にすばらしく、自分の練習の参考にしております。私自身、初心者で、この二つのどちらかを課題曲として選ぶことになっています。両方を難なく演奏されている先生から客観的にみて、初級者にとってどちらがより簡単に演奏できるとお考えですか? どちらも最初の部分しかまだ弾けませんが、両方とも指の動かし方が難しく、選択に迷っています。どちらとは先生からは言えないと思いますが(両方すべきでしょうね)、それぞれの練習のポイント、うまく弾けるコツを教えていただければ大変有り難いと思います。もし良ければ回答いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

    1. 拙演のご視聴とコメントをありがとうございます。

      ソルのセゴビアエチュードをお弾きになるんですね。すばらしいことと思います。

      さて、9番と10番、どちらが簡単かとのご質問ですが、私見では9番です。まあ、私の指の事情というのもあるかもしれませんので、あまり参考にならないかもです。

      ただ、9番を素直に消音の練習曲ととらえるならば、その練習成果はいろんな曲に適応できますが、10番はやや特殊奏法に寄っているきらいがあるので、応用範囲が9番よりは狭いかと思います。なので、この観点からも、まずは9番に取り組むのがいいのではないかと考えます。

      ちなみに、『現代ギター誌』に、永島志基先生によるテクニック講座(ただしセーハと消音に特化したもの)の連載がありました。その2023年10月号と12月号で、9番と10番が取り上げられています。オンラインでPDF版が購入可能と思いますので、ご参考まで。

      私自身は人様にご助言するほどの知識・経験はないので、「先生」はご勘弁いただきたく思います。

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