太陽を別にして、全天で一番明るい恒星は、おおいぬ座のシリウスで、二番目がりゅうこつ座のカノープスです。
このふたつの星は天球上ではわりと近い位置にあります。
シリウス 赤経 06h 45m 赤緯 −16° 43′
カノープス 赤経 06h 24m 赤緯 −52° 42′
シリウスはご存知のとおり「冬の大三角」の一角をなす有名な星で、今の季節は青白く輝く姿がよく見えます。
一方のカノープスはというと、これが全然有名じゃない。なぜかというと、緯度が南に寄っているので、とても見えづらいからなんですね。地球を球体として計算すると、東京で見ると水平線の上わずか1.6度ほどが南中高度になります。
で、これが見たい!
我が家は北緯35.2度くらいのところにあるので、もし水平線が見通せるならば高度2.1度くらいの余裕で見えるはず、と算出されました。
が、当家付近から海は見えません。南に開けた近くの公園から遠望すると山並みが見えます。地図で確認すると、南は伊豆半島が伸びており、はるか石廊崎付近が真南に当たります。とすると聳えているのは天城連峰のようです。
はたしてカノープスは天城越えができるんでしょうか。国土地理院のサイトで詳細に調査しました。
天城連峰の最高峰は万三郎岳、高さは1406mらしいです。公園からの直線距離は約38.9km、公園の標高はおよそ290mです。
そこで計算。
arctan((1406-290)/38900) = 1.6 度
カノープスの南中高度よりも低いので大丈夫そうですね。と思ったのですが、万三郎岳は真南よりはかなり東寄りです。そうなるとカノープスの高度も低くなりますね。
地図で公園から真南をたどると、三蓋山(みかさやま)という山がありました。高さは1013m、直線距離で約40.2km。
arctan((1013-290)/40200) = 1.0 度
こんどこそ大丈夫。南中時には天城峠を越えてカノープスの光が届くと計算されました。
ということで、カメラと三脚を持って出陣。
おおむね晴れていましたが、伊豆半島方面はやや湿度が高かったか少し靄がかかっていました。また、月のあかるい夜(十六夜)でした。それでもさすがは全天で二番目に明るい星、分厚い空気層を突き抜けてやってきた光を、めでたくカメラに収めることができました。
写真ではずうーっと下の方、左右の中央からやや右寄りで光っているのがカノープスです。うっすらと見える山並みのすぐ上ですね。で、左上の明るい星がシリウスです。
ところでこのカノープス、南極老人星とか長寿星などとも呼ばれ、七福神の一柱である寿老人を象徴する星とも言われています。この縁起のいい星を皆様にお裾分けします。
どうぞよいお年をお迎えください。
2件のコメント