狼なんか怖くない 〜偽ロゼッタで最終型〜

50年前に買ったギター『田村満1973』のウルフトーンを改善するプロジェクト、もう終わりにしたはずだったのですが、どうしてもロゼッタの効果を確認したくなりました。

と言っても、もちろん本物のロゼッタを試す術は無く、やむを得ず『偽ロゼッタ』でも作ろうと、レースペーパーを探しに百均に行ってきました。

いろんな種類があった中から、大きさもメーカーも異なる3種類を購入しました。どれにも「本来の用途以外には使用しないでください」と注意書きがありますが、本来の用途とは何でしょうか。少なくとも偽ロゼッタを作ることではないとは思いますので、何があっても自己責任ですね。

あたりまえですが、そのままギターのサウンドホールに合致するような大きさ、デザインのものはありませんから、加工が必要です。しかし薄いですね。16枚重ねで測った厚さが0.75mmほどでした。


■偽ロゼッタ

とりあえず作ってみました。サウンドホールをまるごとカバーするφ86から、φ75、φ65、φ55までの4種類です。ただし実際の空隙部分の面積は測定不能です。

で、いつもの共鳴法で測定。ただの円環と比較してみます。

円環は再度の測定ですが、前回の結果と比べて1Hz以内の精度で再現できているので、問題ないと思います。

で、φ86やφ75あたりでは偽ロゼッタで固有振動数が少し下がり、共鳴の強さも少しだけ弱くなっていますね。

しかし『φ65偽ロゼッタ』で様子がおかしくなり、『φ55偽ロゼッタ』では共鳴が消失するという注目すべき結果が得られました。これは前回の『ティッシュ』に迫るフラットさです。

この結果から『偽ロゼッタ』の働きをどのように説明したらいいのでしょうか。さっぱり分かりません。すくなくともこれ単独で「カクカクシカジカの効果がある」とは言えないように思います。


■トルナボスと合体

理屈は分からないものの、『偽ロゼッタ』は『ティッシュ』よりも安定して使えそうなので、これを常用したいと考えました。となると、問題は取り付け方法です。測定の時は小面積のテープで表面板に止めていますが、いつまでもそうはしたくない。

考えたのは円筒(つまりトルナボス)の端面に『偽ロゼッタ』を貼り付けること。円筒はサウンドホールの内側に摩擦で保持させることができますから、楽器を痛めることはありません。さらに『偽ロゼッタ』が鍔(つば)になりますから、円筒がボディ内に落ちる心配もなくなります。

もちろん円筒と組み合わせることで特性が変わらないとは限りません(というか、変わるに決まってる)から、事前確認が必要です。手元に残っていたのはトルナボスとしての特性が一番良かった長さ41mmの円筒だけだったので、まずはこれでお試し。最終的にはこれを切り詰めて行けばいいだろうとの考えです。

なんということでしょう。『41mm円筒+φ55偽ロゼッタ』でとても平坦な特性が得られたではありませんか。これまで見て見ぬフリをしてきた、80Hzから90Hzの間のくびれ部分もずいぶん改善されています。

他のサイズの偽ロゼッタも試してみましたが、『41mm円筒+φ55偽ロゼッタ』だけが平坦な特性なんです。何が起こっているのか、どういう原理なのか、まったく推測ができません。


■実用化モデル

とにもかくにもこれ以上はないだろうという特性が得られたので、このサイズのままで、長期使用に耐える『ウルフキラー』を作ることにしました。

まず円筒部。これはガムテープの芯を使うことにしました。厚みがあるので丈夫さは文句ないし、端面の面積が稼げるので『偽ロゼッタ』を糊付けしやすい。

ただ直径がφ80と小さいので、これを縦に切り開き、隙間にスペーサを挟んで外径を大きくしました。そして紙テープを巻いて、ギターのサウンドホールにキチキチで嵌るよう細かな調整。

次に偽ロゼッタ部。測定時はアダプタに円盤を嵌めるツーピース方式でしたが、これを一体型で作り直すことにしました。

花模様のレースペーパーは2枚を重ねて糊付けし、厚さと強度をちょっとだけ増強しました。円環部のベース部分は黒く塗って、一見サウンドホール内部の暗さと見分けがつかないようにしました。

最後に両者を糊で接着して出来上がり。

さて、緊張の測定です。円筒のせいであきらかに全体が重くなっているので、これがどう影響するか、しないか。

おお、いいのではないでしょうか。平坦な特性はそのまま維持されているようです。

最後に弦を張って、50Hz(6弦をDにしたときよりもかなり低い)から350Hz(1弦1フレットのFあたり)まで一気に測定してみました。

低音側では76Hz(DとE♭の間)にちょっとピークがありますね。そこを過ぎると200Hz付近までなだらかに振幅が大きくなっていますが、これが楽器の特性なのか測定系の問題なのかは分かりません。

230Hz付近の大きな盛り上がりは表面板の最も低いモードの共鳴です。念のため表面板のインパルス応答を見てみると、

周期が4.37mSくらいなので、1/0.00437 = 228.8 Hz で合ってますよね。それより高音域の山谷は基本的に表面板の特性が大きく影響しているのだろうと(根拠なく)思っています。

ということで、堅牢で見た目も美しい(個人の感想です)ウルフキラーができました。

これが最終型です。もうやりません。

・・・と思います。

いや、もし3Dプリンタを買ったら何かするかも。

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