Macのマウスが接触不良を起こすようになったので、内部のスイッチを交換しました。ネット上で見つけた複数の動画や解説記事を参考にしましたが、それでも苦労しました。なので、私なりに得た知見を書いておこうと思います。
当然ですが、自分でもやってみようという方は、自己責任でお願いいたします。
【対象】
マウス本体:Apple magic mouse 2(評判の悪い、底面に充電ポートがあるやつ)
スイッチ:オムロン製D2FC-7-H → メーカー不明の互換品に交換
【必要な道具】
オープナー(硬質プラスチックの薄いへら)
トルクスドライバー(6点星型の精密ドライバー。サイズはT4とT5の2種類が必要)
はんだごて(鉛フリーはんだ対応の、こて先が高温になるもの)
ハンダ吸い取り機(またはハンダ吸い取り線)
ピンセット、等
【上下分離】
最初の関門は、マウスを開けるところです。オープナーを使って上下に分離させますが、ポイントは ◆上部パーツを外側に広げるイメージで開ける◆ ことです。
開けてみて初めて分かったことですが、上部には4箇所にリング(写真のA部分)があります。また、下部には4箇所の突起(写真のB部分)があります。この突起BがリングAに嵌合して上下が合体します。なので、これを外すには、リングを外側にずらしてやることが必要なのです。

なお、突起Bは上側が斜めに切り落としてあるので、再組立の時はリングAと位置を合わせて、上から押しつければOKです。
嵌合がうまく外れても、まだ上下はフレキケーブルで接続されていますので、大きく引き離すことはできません。スイッチの交換だけならば、このままフレキケーブルがついた状態で作業できなくもありませんが、せっかくなので完全分離させてみました(大したノウハウは必要ないので、説明は省略)。
ちょっと脱線しますが、このマウスは表面にタッチセンサが仕込まれていて、指を滑らせるだけで上下左右のスクロールやページ間移動などができます(これが、このマウスを使いたいほぼ唯一の理由)。そのセンサがどういうものか興味があったので観察したところ、天井部分に数百の電極が張り付いていました。たぶんこれ、静電容量の変化を検出する方式ですね。
【スイッチ交換】
スイッチは、それだけが小さな基板に実装されています。微細な表面実装ではなくて、スルーホールにスイッチの足が差し込まれ、裏面から半田付けされていますので、老眼の私でもなんとか作業できました。
ただ、故障スイッチを外そうとしても ◆はんだが容易に融けません◆ 。おそらくは鉛フリーの融点の高いはんだが使われているのでしょう。あいにく高温対応のはんだごてを持っていなかったので、大型の、この作業には大きすぎる60Wのはんだごてを投入して、なんとか取り外しに成功しました。
で、別のスイッチを取り付け。ジャンクボックスに入っていた古いマウスに同サイズのスイッチが使われていたので、それを引っこ抜いて使用しました。こっちのはんだはすぐに融けました。

新たに取り付けたスイッチは、当然ながらはんだづけされた足が盛り上がっていますが、このままだとダメなんです。 ◆足はできるだけ短くする◆ 必要があります。
そうしないと足が底面についてしまい、基板全体が浮き上がり、そうなると上部パーツを取り付けたとき、常にスイッチが押された状態になってしまいます。また、底面にある電極に触れるおそれも生じます。足はニッパーで切ったくらいではダメで、私はヤスリで基板と面一になるくらいまで削りました。

まあ、要らぬところまで削ってしまい、銅箔が剥き出しになりましたけど。
そんなこんなで、なんとか修理が完了し、良好な動作を復活させることができました。
たかが数百円の部品の故障(オムロンのスイッチが壊れるとは!)で、1万円もするマウスを買いたくなかったので、ダメ元で自分で修理してみたわけですが、うまくいってよかった。
実を言うと、スイッチ基板の高さ調整のために何度も開け閉めを繰り返すうちに、前述のリング(A)を1箇所破損してしまいました。幸い破断面がきれいだったので、アロンアルファでしっかりと接着することができました。
蛇足(あるいは、いちばん言いたいこと)ですが、欧米では少し前から「修理する権利(Right to repair)」が言われるようになってきました。権利だけでなく、実際の製品について、「分解のしやすさ」も確保されるようになって欲しいものです。