2018年01月28日
■情報源(書籍)
フォーカル・ジストニアのことが書かれている本や、直接的な記載はないものの関連ありそうなことが書いてる本をいくつか紹介します。
ほかにもたくさんの書籍があるとは思いますが、私が実際に購入したものだけを取り上げます。
(1) どうして弾けなくなるの?
前書きによれば「演奏家のジストニアに関する日本初の書物」です。2012年に出版されました。内容は、初期症状、原因、診断方法、対処法、闘病記など、広い範囲をカバーしています。出てくる楽器はピアノとギターで大半を占めています。
(2) ピアニストの脳を科学する
超絶技巧を披露するピアニストの身体と頭の中はどうなっているのか、ということを考察した書物です。その中で、「ピアニストの故障」という見出しで1章をあてています。フォーカル・ジストニアもこの章に記述があります。
(3) ジストニアをほんきで克服したいピアノ弾きたちへ
ピアニスト向けに特化された本です。有名曲を使った具体的なリハビリ法が、Youtube動画へのリンクつきで記述されています。これのギター版が欲しいところですが、この本の付録としてアメリカ人ギタリストの闘病記の日本語訳が掲載されており、最初にそれをよく読むことが指示されています。電子書籍だけの出版らしいです。
(4) 脳の中の身体地図
「ボディ・マッピング」について勉強しようと思ったときに買った本です。「狂った可塑性」という章にフォーカル・ジストニアについての記述があり、ゴルファーのイップスと呼ばれる不随意運動とならんで音楽家の障害についての記述があります。
ここまでに揚げたすべての書籍で、フォーカル・ジストニアが発症するのは「脳の可塑性」の行き過ぎた結果であるということが書いてあります。可塑性というのは、身体の運動がより効率的にできるように脳内の神経組織が組み直される性質のこと(←比喩的な表現かもしれませんが)で、その契機は訓練・練習によるものです。そういった脳の柔軟性ゆえに、過度な訓練を行なったことで意図しない動きにまで影響が及ぶようになってしまったものがフォーカル・ジストニアだと理解しています。
(5) 人体解剖図/筋肉・関節の動きとしくみ事典
フォーカル・ジストニアでおかしくなっているのは手指ではなく脳であるということを理解しつつ、だけど、やはり手の内部構造も知っておきたいですよね。指を動かす筋肉や腱や骨がどこにあって、互いにどう繋がっているのか、とか、ある動きをするにはどこに力を込める必要があるか、とか。
(6) 単純な脳、複雑な「私」
これはフォーカル・ジストニアとの関連はまったく考えず、単におもしろそうだから買ったものです。ジストニアのジの字も出てきませんが、可塑性についての記述が(素晴らしい脳の柔軟性という文脈の中で)あります。もうひとつ興味深い記述があって、動作を開始しようという意図が意識に上る前にすでに脳は動作のための準備を始めている(それも、0.5秒から数秒も前に)というのです。このあたり、リハビリをする際のヒントにならないだろうか、と考えています。
(7) 現代ギター2013年5月号(No.591)
この号には『「ジストニアを克服したギタリスト」講演会レポート』という記事があります。おふたりのギタリストがどのようにしてフォーカル・ジストニアを克服されたか、2012年に開催された演奏実演付きの講演会の要点がまとめられています。
■情報源(インタネット)
もちろんネット上にも多くの情報があります。おおまかな分類としては、
・フォーカル・ジストニアについての一般論
・発症した人の闘病記
・治療を謳う医療機関等
になろうかと思います。信用できるものが大半と思いますが、中には眉唾なものも混ざっている印象です。各位におかれましてはご自身で検索のうえ、ご判断下さい。
◆原因について
行き過ぎた脳の可塑性が主な原因であることは、たぶん間違いないことなのだろうと思います。さらにいくつかの書籍には、性格(完璧主義)や遺伝の影響もあるとする記載がありました。
◆治療法について
効果があった治療法としては、「定位脳手術」と「感覚運動再帰訓練(種々の類似表現あり)」が目立って多いように思います。前者は開頭手術によって、誤作動を引き起こすときに働く神経回路を破壊するものです。後者は外部から「正しい刺激」を与えることで、誤作動を引き起こさない新たな神経回路を作るものです。ただ「正しい刺激」が何であるかは人によって異なることが想定され、そのあたりの試行錯誤から始める必要があります。
ともあれ、直ったという実例がいくつもあるのは励まされます。私も「感覚運動再帰訓練」のメニュー検討から始めたいと思っています。