局所性ジストニア その8

2020年03月20日

昨年1月から人前でギターを弾くことを休止して、リハビリをやっています。この期間にやったことや考えたことを、今回から数回に分けて書いていこうと思います。

■想定するモデル

リハビリをするにあたって、ギターを弾くときに手と脳内で起こっていることを考えてみました。あくまで私が想像していることで、医学生理学的に正しいという保証はありませんので、念のため。

♪単音を出す

もっとも基本的な行為は単音を出すことです。これは大まかには1本の指を曲げ、そして戻す行為です。

曲げるときに腕の掌側にある屈筋という筋肉が使われ、脳はそのための指示を出します。戻すときに手の甲側にある伸筋は使われず、屈筋の緊張を解くだけです。脳は「緊張やめ」みたいな指示を出すのだと思います。あるいは緊張の信号を止めるだけか。

ただ、指先は行き(曲げる、弾く)と帰り(弛緩、元の位置に戻る)で同じルートを通りません。そうでないと帰りのルートでも指先が弦に当たってしまいますから。

帰りが弛緩だけだとすると、行きの動きは単純に曲げるだけではないことになります。弾弦時の指の動きを観察すると、指の各関節が少し伸びて指先が弦を捉え、それから曲げに入っています。伸びるときには伸筋を使っているものと思われます。

要するに、単音を出すだけでも、1本の指について[伸筋の緊張→伸筋の弛緩/屈筋の緊張→屈筋の弛緩]という運動があり、脳がそのための指示を出しているのだろうと理解しました(さらに、指先が弦を捉えた感覚を動作にフードバックさせる神経回路も働いているような気もしますが、細かくなりすぎるのでこれくらいで)。

♪重音を出す

同時に2音またはそれ以上の音を出すことです。

単音を出す行為を複数の指で同時に行なっているわけですが、指の組み合わせは何通りかあるので、どの指とどの指に動作を指示するかという選択行為が脳内で行われていることが想定されます。

♪連続で音を出す

単音や重音を連続で出すとき、ひとつの行為が終わってから次の動作に入るのでは時間がかかりすぎて音楽になりません。そうならないのは、音を出す行為がさみだれ的に行われているからです。つまり、先行する指の屈筋が弛緩するときには次の指の運動が始まっている。もしかすると、先行する指が曲がり始めるときには、もう次の指は準備を始めているかもしれない。

脳の動作のイメージとしては、動かすべき指のデータが行列を作って呼び出されるのを待っていて、その先では単音や重音を出す処理がパイプライン的に実行されている感じでしょうか。で、この部分を「シーケンサ」と呼ぶことにします

♪シーケンサを起動する

淀みなく音楽を奏でることができるのは単音や重音を連続して発することができるからであり、そのためにシーケンサが起動されるわけですが、これを呼び出している元は暗譜している内容や目視で読み取っている楽譜の情報だろうと思います。

強弱や音色などの音楽的発想もこのあたりで発生していて、シーケンサ以下の部分に「動作の程度問題」として伝わっていくものと理解しておきます。

♪最上位の意思

さらにそのもとをたどると、この曲が弾きたい、音楽をやりたいという意思にまで遡ることができますね。

♪全体イメージ

ここまで述べたことを簡単な図にしておきます。

人間の脳って、これらのことを同時にあるいはパイプライン的に処理しているんですよね。そう考えるとすごい。多少の誤作動はご愛嬌という気がしてきます。


さて、脳内の機能を上図のように表したとき、フォーカルジストニアはどの部分の問題なのか。おそらくは「シーケンサ」の部分だろうと考えていますが、長くなってきたので今回はここまでにします。

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