局所性ジストニア 番外編

2020年09月26日

エアロバイクによるバーチャルサイクリングシステムも、段ボールで作った望遠鏡用スマホアダプタも、それなりにうまくいったとひとりで喜んでおりますが、今回は失敗作のご紹介です。ソフトウェアです。

もともとは、フォーカルジストニアのリハビリ過程でのちょっとした発見から思いついたものなので、「フォーカル・ジストニア事情」の番外編としてお届けいたします。

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■「禁じられた遊び」と「ルビーラの練習曲」の間で

「禁じられた遊び」の原曲が19世紀の作曲家ルビーラの「練習曲」であるらしいことは広く知られるようになってきました。

両者の一番の違いはアルペジオの順序です。すなわち、禁じられた遊びの右手の指使いがa,m,iの順であるのに対してルビーラのほうはa,i,mです。この違いゆえに私はリハビリで両方を弾くことを自分に課しました。

で、右手指の動きを観察しながらこれらの曲を弾いたとき、m指の動きについて、奇妙なことに気づいたのです。

<<<『禁じられた遊び』でaを弾くときmはほとんど動かないのに、『ルビーラの練習曲』でaを弾くとmがわずかに動く。>>>

ものすごくゆっくり、たとえば1秒に1音を弾くくらいの速度で弾いてもこの違いが生じます。

これはどういうことかと考えてみました。

禁じられた遊びでは、mはaの次なので、aが弾かれるときにはすでにmは準備に入っているのではないか。つまり、意識に上がっていないところではmが早い段階から緊張状態にあるのではないか。

ものの本には、脳内では動作の準備は数秒も前から始まっているという記述もあります(*)から、まんざら的外れでもないかもしれないと思っています。

それに対してルビーラでは、aが弾かれてもmの出番はまだ先(iのあと)なので緊張する必要がない。そして、緊張していないときmはaにつられてわずかに動くのが自然である。

ちなみに、フォーカルジストニアの発症がない左手で薬指を動かすと中指もわずかに動きます。これが自然であって、むしろaを動かしたときにmが動かないほうが不自然。

そうすると、次に使う指が弾弦の直前まで決まらなかったらどうなんだろう、との疑問が浮かんできます。そんなわけで、「ランダム文字発生器」を作って、弾弦の直前まで指が決まらないとどうなるかというお試しすることにしました。

■ランダム文字発生器

これはクリック音にあわせてi,m,aなどの文字がランダムに表示されるソフトウェアです。

画面で指定された指で弾弦します。クリック音に合わせて弾弦することにすれば、そのタイミングまで次の指が表示されないので、事前の準備のしようがありません。

このとき、弾弦していない指はどうなっているんでしょう。さっそく観察してみましょう。

・・・のはずだったのですが、次の指が何なのか画面を見ていなくてはならないので、肝心の指先を見に行けないことが判明しました ;>_<;

感覚を信じると、すべての指が常に緊張状態に入りっぱなしのようで、これをやり続けると指を壊しちゃいそうです。こんな遊びをやってはいけませんね。

とか言いながら、せっかく書いたスクリプトなので何か他の用途はないだろうかと、未練たらたら思案中です。

ブツはここ(↓)にあります。
https://prelude.sakura.ne.jp/RCG_J.html

作っていくうちに、数字も表示させようとか、2文字同時に表示させようとか、あれこれ入れ込んで肥大してしまいました。たいていのPCのブラウザで実行できます。ただしIEは不可です。スマホやタブレットもたぶん動きません。

もちろん手作り感が満載で、そのあたりはバーチャルサイクリングシステムや望遠鏡アダプタと同様です。


* 『本人が「動かそう」と意図したときには、脳はすでに動かす「準備」を始めているらしいんだよね。0.5~1秒くらいも前に。より最近の研究によれば、7秒も前に準備が始まっている場合もあるという。』

単純な脳、複雑な「私」(池谷裕二 講談社ブルーバックス)[3-36「動かそう」と意図したときには、脳はもう準備を始めている]から引用。

ただしこの記述は自由意志の発現(好きなタイミングで手を動かすという実験)に関するものなので、あらかじめ決まったタイミングで指を動かす事例にはそのまま当てはまらないかもしれません。

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