私、このたび令和5年度第二種電気工事士試験を受験して、めでたく合格しました。
といっても、別に新しく商売を始めるつもりはありません。今年の夏も暑いであろうことを見越してエアコン取り付けのバイトで小遣い稼ぎをしようという意図もありません。はたまた、DIY系ユーチューバーになろうという魂胆もありません。
ただ、この資格があると自分で壁の中や天井裏の電線をいじって、コンセントを増設したり、照明のスイッチをいまどきのワイドハンドルのものに替えたり、物置に照明をつけたりすることができるようになります。それが目的です。
試験は筆記試験と技能試験がありました。筆記試験に合格しないと技能試験は受けられません。最初は「筆記試験なんか楽勝」「仕事がのろいから問題は技能試験だな」と思っていましたが、全然違いました。
まず筆記試験。学生時代に学んだ電気理論などはほとんど役立ちませんでした。電気理論の問題がないわけではないのですが、それはせいぜいオームの法則に毛が生えた程度の基礎的なもの。
そういうことではなく、もっと実戦的な知識が問われます。たとえば絶縁電線やケーブルの種類と用途。だいたい私は、この世界では電線とケーブルとコードに区別があることも知りませんでした。あるいは、1.6mmの電線2本と2.0mmの電線、合わせて3本をリングスリーブで圧着するとき、使用するリングスリーブの種類とその際の刻印は何か、とか。リングスリーブって何?刻印って何?
そんな訳で、素直にテキストを買って一から勉強をしました。過去問の問題集も買いました。
ひととおりテキストを読んで、問題を解こうとすると全然できなくて、またテキストを読んで、の繰り返し。考える問題はあまりなくて、記憶力勝負。となると、ひとつ覚えたらふたつ忘れるようになってきた最近の私の脳みそには苦しい作業です。
それでも毎日頑張って勉強して、どうにかこうにか筆記試験に合格しました。
それに比べて、技能試験の練習は楽しかった。
技能試験というのは、与えられた課題にしたがって、実際にスイッチやコンセントやランプレセプタクルなどを結線するものです。こんな(↓)感じのものを作ります。
この技能試験は試験の候補問題があらかじめ公表されています。なので、それをひたすら練習すればいいわけですが、その候補問題が13問もあります。試験ではそのうちのどれか1問が出題されるのですが、どれが出るかは試験当日まで分からない。
なので結局、すべての候補問題を練習しなくてはなりません。そのための部材セットというのが売られています。それも全13問の2回分とか3回分とかで。私は工具も持っていなかったし、要領がまるで分かっていなかったので、工具、テキスト、2回分の練習用部材がセットになっているものを買いました。
受験してみて、練習は絶対に必要だと思いました。試験は時間との勝負になるので工具の使い方に習熟しておく必要があるし、電線の被覆を剥くには±1mmくらいの精度が必要だし、場合によって相当の握力も必要になる(握力のない人はこのようにしましょう、といった指南もある)し。
ただ、私にはそういう手作業が楽しかった。筆記試験に合格してから技能試験までひと月以上ありましたが、その間毎日、複線図(試験問題に基づき、実際の結線情報を詳細に記述した図面)を描き、ケーブルを切り、電線を剥き、器具に取り付け、それを外すという作業を繰り返していました。
少し頭を使いながら手先を動かす、これってボケ防止に最適な作業じゃないかなあ。
その甲斐あって、切りっぱなしのケーブルを剥いてネジ止めのためのリングを作る作業なんか30秒でできるようになりました。そして本番の試験は、40分の制限時間に対して27分ほどで作業を完了し、余裕をもって見直しや自己チェックをすることができました。
ただし練習を通じて大量の廃材が出ました。
これは資源ゴミとして供出しました。
受験者は、私と同年輩と思しき人たちもチラホラ見えて、このあたりが最高齢クラスと思いました。若い方では高校生のグループが、学校で使っているのであろうお揃いの工具セットを持参していました。
多かったのは2〜30代ですね。就職や仕事に役立つ資格ですから、本気で取りに来ている人たちも多いことと思います。
女性も目立ちました。全体の2割くらい。高校生から30代くらいまでかなあ。私の同年輩の女性は見当たりませんでした。
合格率は筆記試験が約6割、技能試験が7割程度(最近は合格率が上がってきているらしい)。つまり全受験者に対する最終合格者は4割くらいってことですね。で、合格者数は毎年6〜7万人くらいもいます。過去の合格者を総計すると、ざっと見積もって全国に数百万人、国民の50人にひとりくらいは電気工事士の有資格者かもしれません。実際に仕事に就いている人はずっと少ないんでしょうけど。
ともあれ、これからいろんな電気工事ができます。さしあたりやりたいのは、パン捏ね機専用のコンセントを設置することです。
私も定年後に取得しましたが、その前年に電験3種を取ったので学科免除のズルをができました。あの学科試験は手強いです。実技はキットを購入して練習しましたが、圧着にしても正しい配線方法の知見を得たのは良かったと思います。私の場合、天井裏やら壁の中に無線のアンテナケーブルを通すのが主目的ではありますが。
実際、公開された問題を練習することで施工技術はかなり高くなりますね。